リフマグとは?電磁式・永電磁式の違いと選び方の基本

「リフマグ」とは、鋼材やスクラップを磁力で吊り上げる装置「リフティングマグネット」の略称です。製鉄所や鋼材センターでは「リフマ」と呼ばれることもあり、現場ごとに呼び方が分かれます。

一見シンプルな装置ですが、リフマグには電磁式・永磁式・永電磁式・バッテリー式の4方式があり、停電時の挙動や消費電力、メンテナンス性が大きく異なります。同じ「リフマグ」でも、方式の選択を誤れば稼働率や安全性を落とす要因になります。

本記事では、リフマグの仕組みから方式別の違い、停電時の挙動、用途別の選定ポイントまでを、生産技術・設備保全のご担当者向けに整理して解説します。

目次

リフマグとは?正式名称と現場での呼び方

リフマグの正式名称は「リフティングマグネット(Lifting Magnet)」で、磁力によって鋼材やスクラップなどの重量物を吊り上げ、搬送する装置の総称です。「リフマ」「リフマグ」はいずれも略称で、どちらが正式というわけではありません。製鉄所や鋼材センターでは「リフマ」、機械加工や板金の現場では「リフマグ」と呼ばれる傾向がありますが、現場ごとの慣習による違いです。

用途は、製鉄所・鋼材センターでの鋼板やスクラップの吊り上げにとどまりません。造船所での厚板搬送、建機(油圧ショベル)への装着、板金加工ラインの素材投入、機械加工の段取りやワーク保持まで広がっています。扱うワークは数kgから数十トン規模まで、設置形態も天井クレーン吊り下げ式から手持ち工具式まで幅があります。

リフマグの仕組み|磁力でワークを吸着・搬送するメカニズム

リフマグは、磁石の磁力で鉄などの磁性金属を引き寄せて持ち上げます。鋼材が吸着面に触れると、磁力線(磁束)はリフマグから鋼材を通って再びリフマグへ戻る輪のような経路(磁気回路)を描き、両者を密着させます。

ここで効いてくるのが、吸着力は「面の密着度」で大きく変わるという点です。鋼材表面に錆や塗装、ゴミがあったり、ワークにたわみがあったりすると、リフマグと鋼材の間にわずかな空隙(すきま)ができます。このすきまが磁力線の流れを弱め、吊り上げ能力を下げます。スペック表どおりの能力を出すには、吸着面の状態管理が想像以上に効きます。

リフマグの磁気回路。密着している状態では磁力線が輪になって流れ、錆やたわみですきまがあると磁力線が弱まり吊り上げ能力が低下する
図1:リフマグの磁気回路と、すきまが吸着力に与える影響

もう一つの判断軸が、磁力のON/OFFをどう切り替えているかです。吊るときは強い磁力を出し、置くときは磁力を消す必要があります。次章の4方式は、まさにこの切り替えの仕組みで分かれています。

リフマグの主要4方式|電磁式・永磁式・永電磁式・バッテリー式の違い

リフマグはON/OFFの仕組みによって、電磁式・永磁式・永電磁式・バッテリー式の4方式に分かれます。それぞれに得意分野と弱点があり、「どれが優れているか」ではなく「どの現場に合うか」で選びます。

電磁式|大重量・連続作業に強いが停電に弱い

電磁石のコイルに電流を流して磁力を発生させる、最も歴史の長い方式です。電流を流している間だけ磁力が出るためON/OFFの切り替えが速く、製鉄所のスクラップヤードや鋼材センターでの大重量物の連続搬送に向きます。

弱点は常に電力を供給し続ける必要がある点です。コイルが発熱するため冷却対策が必要で、消費電力も大きくなります。停電すれば磁力が失われ、吊り上げていたワークが落下するリスクがあるため、バックアップバッテリーを併設するのが通例です。

永磁式|電力不要だが解放操作に手間がかかる

ネオジム磁石やフェライト磁石などの永久磁石の磁力をそのまま利用します。電力を使わず、停電の心配もありません。装置がシンプルで小型化しやすく、機械加工の段取り工程やワーク保持具など、比較的軽量な用途で使われます。

ただし磁力を「消す」ことが難しいという課題があります。ワークを置いた後にリフマグを引き剥がす必要があり、大型化・重量物への適用には限界があります。

永電磁式|永磁の安全性と電磁の操作性を両立

永久磁石の磁力を、電気パルスで瞬間的に切り替える方式です。レバー操作や短時間の通電でON/OFFを行い、吊り上げ中は電力を必要としません。停電時も磁力を保持するため、ワーク落下のリスクを抑えられます。

同等能力の電磁石と比較して消費電力を97%削減でき、発熱もほとんどありません。電磁式の操作性と永磁式の安全性を両立する方式として、機械加工の段取りや自動化ライン、安全性が重視される現場で採用が広がっています。

バッテリー式|配線不要で屋外作業に強い

電磁式の原理はそのままに、内蔵バッテリーから電力を供給します。電源ケーブルが不要なため、屋外の建設現場や鋼材ヤード、配線の取り回しが難しい現場で使われます。建機への装着もこの方式です。弱点は稼働時間がバッテリー容量に左右される点と、定期的な充電・交換が必要な点です。

4方式の比較表

項目電磁式永磁式永電磁式バッテリー式
磁力源電磁石永久磁石永久磁石(電気で切替)電磁石(バッテリー駆動)
吊上中の電力常時必要不要不要必要
停電時の挙動磁力消失(落下リスク)磁力保持磁力保持内部バッテリーで保持
消費電力ゼロ極小
発熱ありなしほぼなしあり
大重量対応
主な用途製鉄・スクラップ段取り・保持段取り・搬送・自動化屋外・建機装着

停電時に何が起きるか|方式別のフェールセーフ設計

選定で見落とせないのが、停電や電源遮断時の挙動です。重量物を吊り上げている最中に磁力が失われれば、ワーク落下による設備損傷や事故につながります。フェールセーフ(故障時にも安全側に作動する)設計は、リフマグ選びの最重要ポイントの一つです。

電磁式は原理上、停電すれば磁力が失われます。これを補うためバックアップバッテリーを併設し、安全に降ろすまでの時間を確保する設計が一般的です。ただしバッテリーには寿命があり、点検・交換を怠るとフェールセーフが機能しません。一方永磁式・永電磁式は磁力源が永久磁石のため、停電しても磁力は保持されます。電力はON/OFFを切り替えるときだけ使い、吊り上げ中の磁力維持には使いません。バッテリー式は残量がそのまま安全マージンになるため、残量警告や自動降下機能を備えた製品が主流です。

電力に依存せず磁力を保持できる永磁式・永電磁式は、人が下を通るラインや夜間の無人運転など、落下リスクを避けたい現場で選ばれる傾向があります。

用途別の選定ポイントとチェックリスト

4方式の特性を踏まえ、現場のシーン別に判断基準を整理します。選定では吊上能力のスペック値だけでなく、ワーク形状・作業環境・安全要件・運用頻度の4つを組み合わせて判断します。

製鉄所・鋼材センターのスクラップ・鋼板搬送

数トン〜数十トン規模を高頻度で吊り上げる現場では、吊上能力と連続作業性が優先されるため電磁式(バックアップバッテリー付き)が標準です。定格吊上能力に加え、デューティサイクル(連続使用率)とバッテリーの保持時間を確認します。

板金加工ライン・素材投入

定尺鋼板や薄板を1枚ずつ取り出して加工機へ供給する用途では2枚取り防止が要件になるため、磁束の浸透深度を制御できる永電磁式・永磁式が選ばれます。

機械加工の段取り・ワーク保持

5軸マシニングセンタや旋盤の段取りでは、ワーク上面を解放できることでクランプの干渉なく全面加工ができます。加工エリアに電力配線を引きたくないため、電力不要で磁力を保持できる永電磁式が向きます。

屋外・建設現場・建機装着

電源が確保しにくい屋外作業や油圧ショベルへの装着ではバッテリー式が選ばれます。連続稼働時間とバッテリー交換性が判断の鍵です。

選定チェックリスト

確認項目チェックポイント
ワーク重量・形状最大重量、板厚、表面状態(錆・塗装の有無)
吊上能力カタログ値の安全係数、ワーク条件での実吸着力
安全要件停電時の挙動、人の通行、夜間無人運転の有無
作業頻度連続使用率、1日あたりの吊上回数
設置環境電源確保、屋内/屋外、温度・粉塵
運用コスト消費電力、バッテリー交換、メンテナンス周期

吊上能力のカタログ値は理想条件(厚板・平滑面・常温)での数値です。実際の現場では錆・たわみ・板厚不足で能力が下がるため、安全率を見込んだ選定が欠かせません。

鋼板の吊り上げを安全にする|永電磁式リフティングマグネットの選定

機械加工の段取りだけでなく、鋼板そのものをクレーンで吊り上げ・運搬する工程でも永電磁式は使われています。ここではマグスイッチ社(米国)の永電磁マグネットを例に、安全に運用するための考え方を整理します。

安全に吊り上げるための基本は、マグネットの吸着力を対象荷重の3倍以上に確保する設計です(安全率3:1)。これに加えて、吊り上げ中に消磁ボタンを誤って押しても磁力が解除されないインターロック機構を備えた製品もあり、意図しない消磁によるワーク落下を防ぎます。

型式方式吸着力の目安主な用途
固定フレーム型鋼板の長さに応じてマグネットを選択励磁2〜16トン鋼板の入出庫・切断機への供給
テレスコピック型伸縮アームで鋼板長に合わせ調整4〜18トン長さの異なる鋼板の混在ライン
垂直吊システム水平・垂直置き間を搬送4〜16トン省スペースな鋼板の立て置き保管
スラブ・コイル対応厚板・巻取材向けの専用設計5〜30トン/2〜40トン製鋼工場・鋳造工場の重量物搬送

板金加工ラインで求められる1枚運搬には「インチング機能」が使われます。複数枚を吸着した状態から磁力をゆっくり下げ、下側の鋼板を切り離す仕組みです。磁力は多段階で調整でき、薄板を扱う際は磁力を落とし、運搬時には自動で最大磁力に切り替わります。

マグスイッチ社はマグネット技術で世界に65件以上の特許を保有し、総収入の15〜20%を新技術・製品開発に投資しているメーカーです。機種選定の詳細はHLSシリーズ製品ページで確認できます。ロボットのエンドエフェクタ向けのマグネットグリッパーは、別記事で選び方を解説しています。

よくある質問

停電したら吊っているワークは落ちますか?

方式によって異なります。永磁式・永電磁式は磁力源が永久磁石のため、停電しても磁力を保持します。電磁式は磁力が失われるため、バックアップバッテリーで安全に降ろすまでの時間を確保する設計が一般的です。バッテリーは点検・交換を怠るとフェールセーフが働かなくなるため、保全計画に含めてください。

カタログの吊上能力どおりに吊れますか?

カタログ値は理想条件(厚板・平滑面・常温)での数値です。錆・塗装・ゴミ・ワークのたわみですきまができると磁力線の流れが弱まり、能力が下がります。実際のワーク条件での吸着力を確認し、安全係数を見込んで選定してください。

薄板を1枚ずつ取り出せますか?

磁束の浸透深度を制御できる永電磁式・永磁式であれば、2枚取りを避けやすくなります。板厚と重ね置きの条件によって適した機種が変わるため、実際の素材で確認するのが確実です。

ロボットのハンドとして使えますか?

ロボットのエンドエフェクタ向けにはマグネットグリッパーがあります。自動車・建機部品や建設資材、鋼材などの搬送を前提に設計された製品です。

まとめ

リフマグには電磁式・永磁式・永電磁式・バッテリー式の4方式があり、停電時の挙動・消費電力・適用用途が異なります。「どの方式が優れているか」ではなく、自社の現場条件にどの方式が合うかを見極めることが、安全で生産性の高い運用につながります。

選定にあたっては、本記事のチェックリスト(ワーク重量・吊上能力・安全要件・作業頻度・設置環境・運用コスト)を起点に現場の優先順位を整理してください。スペック値だけで判断せず、ワーク条件下での実吸着力やフェールセーフ設計まで含めて検討することで、導入後のトラブルを減らせます。

愛知産業では、永電磁式リフマグを中心に、現場ごとの選定相談・カタログ提供を承っております。

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この記事を書いた人

愛知産業株式会社の編集部です。溶接・接合と金属加工の技術情報を、現場導入の視点で整理してお届けします。カタログのスペック値だけでは見えない選定の判断基準を、実務に役立つ形でご紹介します。

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