バリ取りをロボットで自動化する際、力を一定に保つ装置には大きく分けてActiveとPassiveの2方式があります。どちらを選ぶかで、対応できる工程の複雑さや導入時の構成が変わります。本記事では、両方式の違いと、条件別の選び方を整理します。
前提|バリ取りロボットで力制御が必要になる理由
バリ取りをロボットで自動化する場合、ロボット単体では一定の力でワークに押し当て続けることができません。ロボットは教示した位置・軌道どおりに動く位置制御が基本で、ワークの個体差やアームのしなりによる力の変化には追従できないためです。特に鋳物や溶接品のバリは、発生する位置・大きさ・向きが個体ごとに異なるため、固定した軌道と力だけでは削り残しや削りすぎが起こりやすくなります。
この課題に対応するのが、ロボットアーム先端に取り付けるコンプライアンス装置(力制御装置)です。装置がツールの押し付け力を一定に保つことで、ワークごとのばらつきがあっても安定したバリ取りができます。装置の基本的な仕組み(力覚センサとクローズドループ制御)については、関連記事で詳しく解説予定です。
方式ごとの特徴
Active方式
Activeコンプライアンス方式は、研削対象の表面に接触した際に各種センサーからの入力を常時フィードバックし、向きによって変化するツール荷重を吸収して、一貫した加圧力を維持します。センサーとフィードバック機構を持つ分、専用コントローラーが必要になり、構成はPassive方式より複雑になります。
Passive方式
Passiveコンプライアンス方式は、減圧器で設定したエアー圧力によって設定加圧力を維持する方式です。研削対象へのアプローチの向きが一定の場合に使用します。センサーによるフィードバック制御を持たない分、構成をシンプルにできます。取付けタイプもロボットアーム搭載向けの垂直型・水平型に加え、アームに搭載せず据え置いて使う据置型がラインアップされている機種もあります。
比較表|力の維持方式と向きの変化への対応
| 方式 | 力の維持方式 | 向きの変化への対応 |
|---|---|---|
| Active | センサー入力を常時フィードバック | 対応できる |
| Passive | 減圧器で設定したエアー圧力 | アプローチの向きが一定であることが前提 |
両方式とも対応できる加圧力の範囲は重なっており、力の大きさだけでは選べません。工程中にアプローチの向きが変化するかどうかが、方式を分ける最大のポイントです。
条件別の選び方
比較表だけでは決めきれない場合は、実際のワークとアプローチの条件に当てはめて絞り込みます。以下の3つの観点を順に確認すると、候補が絞りやすくなります。
アプローチ方向が変わる工程(複雑形状のバリ取り)
鋳物や複雑な曲面を持つワークは、バリの向きに合わせてツールのアプローチ方向が工程中に変わります。Active方式なら、向きが変わってもセンサーが荷重変化を検知して加圧力を維持できるため、こうした工程で候補になります。
アプローチが一定の工程(平面的なバリ取り)
板金の端面など、ツールが常に同じ向きからワークに接触する工程では、Passive方式でも設定したエアー圧力を維持できます。センサーやコントローラを介さないシンプルな構成が候補になります。
構成のシンプルさ・コスト
Active方式は専用コントローラーとセンサー配線が必要になる分、構成要素が増えます。Passive方式はエアー配管と減圧器のみで加圧力を設定できるため、構成をシンプルにしたい場合の候補になります。なお、方式が変わってもスピンドルユニットやツール自体は共用できる場合があります。
| 条件 | 候補になる方式 |
|---|---|
| アプローチ方向が工程中に変わる(複雑形状) | Active |
| アプローチ方向がほぼ一定(平面的な作業) | Passive |
| 構成をシンプルにしたい・配線を減らしたい | Passive |
| 荷重変化を数値で管理・監視したい | Active |
対応製品の例|プッシュコープ社の力制御装置
上記の判断基準をふまえた具体的な製品の例として、愛知産業が取り扱うプッシュコープ社(米国)の力制御装置を紹介します。自社工程の要件と比較する材料としてご覧ください。
Active方式の代表機種はAFD620・AFD1240シリーズで、機種により最大加圧力120N〜956N、制御精度は±1.0N〜±4.0Nの範囲です(カタログ値)。専用のコントローラー「FCUFLEX」と組み合わせて使用します。Passive方式の代表機種はAFD72・AFD82・AFD92シリーズで、最大加圧力は同じく120N〜956Nの範囲です(カタログ値)。
ツールを回転させるスピンドルユニットには、標準のBT30・BT40・ISO20ツールホルダーに対応するタイプと、ER型コレットチャックで手動交換するタイプがあり、いずれもActive・Passiveどちらのスライダーユニットにも搭載できます。スピンドル専用のサーボアンプは米国Kollmorgen社製です。なお、エアーサンダー(RPS100)のようにAFD310(Active系)とAFD72(Passive系)の両方に対応するツールもあり、方式が変わってもツール自体を共用できる場合があります。
機種ごとの詳しい仕様はプッシュコープ社の製品ページで確認できます。
よくある質問
Active・Passiveのどちらもワークへの追従はできますか?
どちらもスライダーがワークとの距離の変化を吸収し、押し付け力を保ちます。違いは、荷重が変わったときにセンサーで検知して積極的に補正するか(Active)、設定したエアー圧のみで一定に保つか(Passive)という点です。
導入後に方式を変更できますか?
スピンドルユニットやツールにはActive・Passive両方のスライダーユニットに搭載できるものがあり、スライダーユニット本体を載せ替える形で構成を変更できる場合があります。既存設備への追加可否は機種構成によって異なるため、導入時に確認が必要です。
コントローラは両方式で共通ですか?
Activeコンプライアンスコントローラー(FCUFLEX)はActive方式専用で、対応機種はAFD310・AFD620・AFD1240シリーズです。Passive方式はエアー圧の設定のみで加圧力を維持するため、専用コントローラーを必要としません。
精度を数値で管理したい場合はどちらを選ぶべきですか?
Active方式(AFD620・AFD1240シリーズ)は機種ごとに±1.0N〜±4.0Nの制御精度がカタログに記載されています。Passive方式は個別の制御精度の数値公開が見当たらないため、精度を数値で管理・比較したい場合はActive方式が候補になります。実際の工程での適合可否は営業担当にご相談ください。
まとめ
ActiveとPassiveのコンプライアンス方式は、対応できる加圧力の範囲が重なっているため、力の大きさよりも「工程中にアプローチの向きが変わるかどうか」で選ぶのが基本です。向きが変わる複雑形状のバリ取りにはActive方式、アプローチが一定の平面的な作業にはPassive方式が候補になります。構成のシンプルさやコントローラの要否、据置型の要否も含めて、自社の工程に合う方式を検討してください。なお、スピンドルユニットやツールは両方式で共用できるものが多いため、まずはワークの形状とアプローチのばらつきから方式を絞り込み、その後で搭載するツールを検討する順序が進めやすくなります。
製品ラインアップはプッシュコープ社の製品ページ、導入事例は適用事例のページで確認できます。仕様の詳細や自社工程への適用可否は、カタログ資料請求またはお問い合わせからご相談いただけます。

